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おひげ萌え
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 わらわは、しょこである。理由は、まだ分からぬ。

 なぜそうなったのか頓(とん)と見當がつかぬ。

 何でもわらわとは似てもにつかぬ生物どもに、撫で回されたのだけは記憶して居る。わらわはこゝで始めて人間といふものを見た。

 然(しか)もあとで聞くとそれは変人といふ人間中で一番獰悪(だうあく)な部類であつたさうだ。

 此変人といふのは時々我々を捕(つかま)へて頬擦りにして遊ぶといふ話である。
 
 然し其當時は何といふ考(かんがへ)もなかつたから別段恐しいとも思はなかつた。

 但(たゞ)掴まれてスーと持ち上げられてガッチリ押さへ込まれた時は何だか爪を切られた感じが有つた許(ばか)りである。

 掌の上で少し噛み付いてやつて奮起音を出して、抵抗むなしくわらわの手の一部が切り落とされていくのをみたのが所謂爪きりといふものゝ見始(みはじめ)であらう。此時妙なものだと思つた感じが今でも殘つて居る。

 第一柔らかい毛を以て装飾されべき筈の彼らの手の甲はつるつるすべすべである。

 其後足の爪も大分ひどい目に逢つたがこんな元凶には一度も出會(でく)はした事がない。加之(のみならず)反省の色無く声色を上げて頭を撫で回してくる。

 そふしてわらわの怒りを収めやうと掴んだまま時々くるくると回りだす。どうにも目が回り弱つた。是で以って疲労困憊にして黄色いヒヨコが目の前を舞う事もあるといふ事は漸く此頃(このごろ)知つた。

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 斯様なわけであるから、わらわは、とても疲れてしまつたのである。
by orientalis | 2013-08-23 21:28 | Mammalia
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